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手術を避けたい腱板損傷にPRP療法は有効?効果と費用・治療法を解説

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手術以外の選択肢を探している方へ|腱板損傷とPRP療法の考え方

注射やリハビリを半年続けても右肩の痛みが引かない。そのうえで手術をすすめられたけれど、長期の休職は組みにくい——そんな行き詰まりを抱えたまま情報を探している方は少なくありません。腱板損傷への選択肢として、ご自身の血液を用いるPRP療法が語られる機会も増えました。この記事では作用の考え方、変化の目安となる時間、費用感と医療費控除、厚生労働省へ届出済みの再生医療等提供機関を見極める視点を、整形外科の立場から整理します。

この記事の要点まとめ

  • PRP療法は自身の血液成分を用い、腱板部分断裂の状態に応じて検討される選択肢の一つ
  • 変化の実感は2〜4週目以降とされ、持続期間には個人差があり継続的な経過観察が求められる
  • 自由診療のため費用内訳の確認が重要で、届出済み医療機関か見極める視点も参考になる

手術を提案された腱板部分断裂におけるPRP療法の位置づけ

腱板損傷で痛みが続く原因と保存療法の限界

肩の腱板は、肩関節を支える4つの筋肉の腱が集まった部分です。やや厄介なのは、この腱組織が筋肉に比べて血流に乏しいという構造。栄養や修復に関わる細胞が届きにくいため、いったん傷むと時間を要しやすい部位といえます。

ステロイド注射やヒアルロン酸注射、内服薬は、炎症や痛みの信号を抑えることが主な役割とされています。動かしやすさが戻る時期もありますが、傷んだ腱そのものを組み替えるアプローチではないという点は押さえておきたいところ。リハビリで肩甲骨や体幹の使い方を整える作業は土台として欠かせない一方、損傷部位に力学的な負担が集中し続けると、症状が停滞する例も報告されています3

自身の血液成分を利用して修復力を高めるメカニズム

PRP(Platelet Rich Plasma/多血小板血漿)療法は、患者さまご自身の血液を採取し、遠心分離器で血小板を濃縮した成分を患部へ注入する方法です。血小板は、組織が傷ついたときに集まって修復の合図を出す性質を持ち、PDGFやTGF-βといった成長因子を含みます。

この成長因子が、細胞の集積や血管の新生といった生体本来の修復プロセスへ働きかけると考えられています。濃縮度や調製法によってACP-PRP、HD-PRP(高濃度PRP)など複数の種類があり、対象部位や状態に応じて選択されます。自己血由来のため拒絶反応の懸念は比較的少ないとされる一方、再生医療等の分野は研究が進行中で、作用の程度には個人差があることも公的機関から発信されています1

完全断裂と部分断裂における適用範囲と限界の提示

鍵になるのは適応の見極めです。腱板の連続性が残っている軽度〜中等度の部分断裂は、修復環境を後押しする狙いでPRP療法が検討されやすい領域。反対に、腱が完全に切れて上腕骨から離れている完全断裂や、断裂範囲が大きく筋の萎縮・脂肪変性が進んだ状態では、注入だけで構造をつなぎ直すことは想定されていません。

そうした場合は腱板修復術などの外科的治療が主軸となり、術後管理まで含めた計画が必要になります3。夜間に眠れないほどの痛み、腕がほとんど上がらない、力が入りにくい——こうしたサインがある方は、まず画像評価で断裂の形態を確かめることが出発点。PRP療法は「手術の代わり」ではなく、状態に応じて選ぶ複数の選択肢のひとつという位置づけで捉えると、判断がブレにくくなります。

PRP療法の効果が現れる時期と治療直後の経過・注意点

PRP療法の効果が現れる時期と治療直後の経過・注意点

効果を実感し始める時期と持続期間の目安

PRP療法は、注入した当日に痛みが消えるタイプの処置ではありません。組織の修復プロセスへ働きかける発想のため、変化を自覚するまでに時間差が生じます。一般的な説明としては、注入後2〜4週目あたりから徐々に、3ヶ月前後まで経過をみながら評価する流れが多く、当院でも同様の時間軸でご案内しています。ただし感じ方には個人差があります。

持続についても「何年」と一律に区切れるものではありません。損傷の程度、年齢、肩の使い方、体格や生活習慣によって幅が出ます。1回で経過をみる方もいれば、間隔をあけて複数回を組む計画を立てる方も。数ヶ月ごとの再評価を前提に、リハビリで肩の使い方を整えながら進めるのが現実的でしょう1

治療直後に起こる反応とダウンタイム時の痛みの管理

注入後、数日のあいだ患部に張りや熱感、痛みの一時的な増加が出ることがあります。修復に関わる反応が起きている過程で見られるもので、多くは数日から1週間ほどで落ち着いていく経過をとります。

対処としては、局所の冷却や休息、就寝時にクッションで腕を支える工夫など。ここで注意が必要なのが薬の選び方です。炎症を強く抑える消炎鎮痛薬は、PRPの働きに影響する可能性が指摘されているため、自己判断での服用は控え、必ず担当医にご相談ください。痛みが強い場合の代替手段も、事前に説明を受けておくと気持ちが軽くなります。腫れが引かない、発熱を伴うなど通常と異なる経過があれば、早めのご連絡を2

当日から数日間に及ぶ日常生活の制限事項

処置当日は、長時間の入浴やサウナ、飲酒を控えるのが一般的です。血流が急に増える行為は、注入部の腫れや痛みが強く出る要因になりえます。シャワーは翌日以降から可とする施設が多いものの、方針は施設ごとに異なるため、指示に従ってください。

運動については、デスクワークや通勤程度なら当日から可能な場合が多い一方、ゴルフのスイングや上半身のウエイトトレーニングは、数週間の調整期間を設けておくと無理がありません。プレゼンで腕を高く上げる動作なども、痛みが出ない範囲に留める意識を。喫煙は組織の修復環境に不利に働くとされるため、この期間だけでも量を見直す価値があります。

治療費用の相場と適切な医療機関を選ぶための基準

自由診療における費用の目安と医療費控除の対象制度

PRP療法は公的医療保険の適用外となる自由診療で、費用は施設ごとに設定されています。肩関節への注入では、調製方法(ACP-PRP、HD-PRPなど)や使用キット、回数によって差が出るため、1回あたりの総額に加え、初診料・検査料・リハビリ費用を含めた見積りを事前に確認することが判断の軸になります。当院の料金や治療メニューは、状態を確認したうえで診察時に具体的にご説明しています。

なお、自由診療であっても治療を目的とした医療費であれば、医療費控除の対象となる場合があります。適用の可否や必要書類は個々の状況で変わりますので、領収書を保管し、制度の詳細は税務署や公的な情報源でご確認ください2

厚生労働省へ届出済みの第3種再生医療等提供機関とは

再生医療等の提供は、法制度のもとでリスクに応じて第1種〜第3種に分類されます。自己血由来のPRP療法は第3種に区分され、提供にあたっては提供計画を認定再生医療等委員会で審査し、厚生労働省へ届出を行うことが求められます2

つまり届出の有無は、治療の内容や管理体制が法制度上の確認を受けているかを示す客観的な手がかりになるわけです。MTXスポーツ・関節クリニックは、厚生労働省へ届出済みの第3種再生医療等提供機関です。ご相談の際には、計画の内容や説明・同意の手順についてもお伝えしています。医療機関を選ぶ場面では、届出の有無、説明文書の整備、費用の明示といった点をあわせて確認しておくと、納得感が高まります。

超音波(エコー)ガイド下の精確な注入と設備体制のチェック

もう一つの視点は、どこへ注入するかという技術面です。腱板は深部にあり、周囲には腱や滑液包が密集しています。目標とする部位へ届かなければ、想定した働きは得られにくくなると考えられます。

当院では超音波(エコー)を用いて腱板の形態や損傷の位置をリアルタイムに確認しながら評価・処置を行い、注射を用いない体外衝撃波治療も状態に応じて組み合わせています。加えて当クリニックの特徴として、再生医療に理学療法士によるリハビリやトレーニングを柔軟に組み合わせ、治療からアフターケアまで一か所で対応できる体制を整えました。設備の有無だけでなく、処置後のリハビリまで一貫して関われるかどうかが、医療機関を見極める実務的なポイントになります3

自分の状態に応じた治療アプローチを選択するための判断軸

PRP療法が向いている人・向いていない人の特徴

頭の中を整理するために、状況を分けて考えてみましょう。

  • 検討しやすい状況:腱板の部分断裂で連続性が保たれている、注射やリハビリを一定期間続けたが停滞している、長期の入院・休職を組みにくい、処置後もリハビリに通える
  • 慎重な検討を要する状況:断裂範囲が広い、筋の萎縮が進んでいる、腕がほとんど挙がらない、感染症や血液の疾患・服薬内容によって適応の見極めが必要な場合

大切なのは、この振り分けを自己判断で行わないことです。画像評価と診察を踏まえた適応の見極めが、納得のいく選択の前提になります3。手術が適した状態と考えられる場合は、その情報も含めてお伝えします。

仕事や趣味の運動を継続しながら進める復帰スケジュール

管理職としてデスクワークと会議が続く方であれば、処置は通院で完結し、当日から通常業務に戻る想定が一般的です。パソコン作業は肩を大きく上げないため制限が少ないものの、資料を高い棚から取る、腕を挙げたまま説明するといった動作は数日ほど控えめに。

ジムでの下半身トレーニングや歩行系の有酸素運動は早期から再開しやすく、上半身のプレス系種目やゴルフのフルスイングは、痛みと可動域の様子を見ながら段階的に。目安として数週間はハーフスイングやパッティング中心、本格的なラウンド復帰は3ヶ月前後を目標に再評価する流れが現実的でしょう。時期は状態次第で前後します。

MTXスポーツ・関節クリニックにおける診療と相談の手順

当院ではまず問診で痛みの経過や仕事・競技の内容を伺い、可動域や筋力を評価します。続いてエコーで腱板の状態を確認し、必要に応じて他院での画像データも参照しながら、PRP療法・体外衝撃波・リハビリといった選択肢と想定される経過、費用、注意点をご説明します。

そのうえで、生活スケジュールに合わせた計画を一緒に組み立てていきます。医師、理学療法士、トレーナーが横断的に関わり、痛みへの対応だけでなく、肩に負担のかかりにくい身体の使い方まで見据えたパーソナライズされたご提案を行うのが、当クリニックの姿勢です。手術か否かで迷っている段階でも、まず肩の状態を客観的に把握することが次の一歩になります1

よくある質問

Q1. PRP療法の成功率はどのくらいですか?

A. 成功率という形で一律の数値をお示しすることは、医療広告の考え方からも医学的な観点からも適当ではありません。損傷の形態、年齢、肩の使い方、リハビリの継続度など変動要因が多く、経過には個人差があります。診察と画像評価をもとに、想定される経過と限界を含めてご説明する形をとっています。

Q2. プロのアスリートもこの治療を受けていると聞きました。

A. 国内外のスポーツ選手が再生医療の一種を受けたと報じられる例はありますが、個別の症例が他の方にそのまま当てはまるわけではありません。競技レベルや部位、損傷の程度が異なりますので、報道内容を基準にするのではなく、ご自身の状態に対する適応の検討を優先してください。

Q3. 効果は何年くらい続くのでしょうか?

A. 持続期間を年数で断定できる根拠は確立されていません。数ヶ月単位で経過を追い、必要に応じて追加の計画やリハビリでの補強を検討していくのが一般的な進め方です。肩への負担のかけ方によっても経過は変わります。

Q4. 膝の半月板損傷でもPRP療法は検討できますか?

A. 膝関節もご相談の多い部位で、半月板や軟骨の状態に応じて検討されることがあります。ただし損傷の形態や進行度によって考え方が変わるため、肩と同様にエコーや画像評価を踏まえた個別の判断が必要です。

Q5. 保険は使えますか?費用の相談はできますか?

A. PRP療法は自由診療で、公的医療保険の適用外です。費用は診察時に総額の内訳を含めてご案内していますので、ご不明な点は遠慮なくお尋ねください。医療費控除の対象になる場合もありますので、領収書は保管しておくとよいでしょう。

参考文献

1. 日本医療研究開発機構(AMED)|医療分野の研究開発・イノベーションに関する情報 https://www.amed.go.jp/

2. 厚生労働省|医療・公衆衛生に関する行政情報 https://www.mhlw.go.jp/

3. 日本外科学会|外科一般・手術・術後管理に関する学術情報 https://www.jssoc.or.jp/

阿多由梨加

医師


MTXスポーツ・関節クリニック

院長

阿多由梨加

▶ 監修者プロフィール

経歴
2010年 横浜市立大学附属病院
2011年 横浜南共済病院
2013年 神奈川県立こども医療センター
2015年 横浜掖済会病院
2016年 Dr.KAKUKOスポーツクリニック
2023年 MTXスポーツ・関節クリニック 院長
資格・所属学会
日本整形外科学会
日本整形外科スポーツ医学会
日本臨床スポーツ医学会
日本小児整形外科学会
日本整形外科学会認定専門医(第122753号)
医学博士
日本スポーツ協会認定スポーツドクター
2017年〜自転車競技日本代表チームドクター