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仕事やジョギングを続けたい人へ|膝の痛みを放置するリスクと受診目安

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階段で右膝が痛む日が続くときに考えたいこと

通勤の乗り換えだけで、一日に上り下りする階段は数百段に及ぶこともあります。その途中で膝が痛み、週末のジョギングも切り上げるようになった。それでも歩けるうちは様子を見たいと考えるのは、ごく自然なことです。ただ、痛みの強さと膝の中の状態は必ずしも一致しません。受診するかどうかは、痛みの続き方と生活への影響を手がかりに考えるのが現実的です。 この記事では、放置した場合に起こり得る変化、症状別の受診目安、運動を続けたい希望の伝え方、治療と費用の確認事項を整理します。

この記事の要点まとめ

  • 膝の痛みは、続く期間や階段・通勤・運動への影響を手がかりに受診を検討します。
  • 発熱や腫れ、けが後の強い痛み、体重をかけられない場合は早めに医療機関へ相談します。
  • 走りたい希望や仕事中の動作を伝え、運動量の調整、治療の選択肢、通院回数や費用を医師に尋ねます。

目次

膝の痛みを放置すると、仕事や歩行に何が起こり得る?

膝の痛みを放置すると、仕事や歩行に何が起こり得る?

痛みをかばう生活が階段・通勤に及ぼす影響

痛む膝をかばっていると、歩く距離は知らないうちに減り、エスカレーターを選ぶ場面が増えていきます。活動量が落ちれば太ももの筋力も衰えやすく、膝を支える力が弱まるぶん、階段の上り下りがさらに負担に感じられる。そんな悪循環が起こり得ます。片脚に体重を乗せる動作が不安定になると、駅の階段や段差でつまずかないかという不安も出てきます。痛みそのものに加えて、動かなくなることで生じる筋力と活動量の低下にも目を向けておきたいところです。

痛みの強さだけでは軟骨の状態は分からない

「痛い=軟骨がすり減っている」とは限りません。画像で関節の変化が目立っても痛みが軽い方がいる一方、変化が小さくても強く痛む方もいます。膝の内側の痛みは変形性膝関節症でよくみられますが、筋肉や腱、半月板など別の組織が関わっている場合もあります。以前に加齢による変化を指摘されていても、今の痛みが同じ原因とは言い切れません。自己判断で決めつけず、一度確かめておくと安心です。

ジョギングや仕事の負荷は一律に悪化の原因とはいえない

走ることと変形性膝関節症の関係を調べた系統的レビューでは、明確な関連は確認されておらず、結論が定まっていない部分が残るとされています1。一方、職業との関係をまとめたメタ解析では、膝をつく作業や重い物を扱う仕事で、座り仕事に比べて変形性膝関節症のリスクが高い傾向が報告されています2。「走るから悪化する」とは一概にいえず、どの動作でどの程度の負荷がかかっているかを個別にみる必要があります。

膝の痛みはいつ整形外科へ?症状別の受診目安

膝の痛みはいつ整形外科へ?症状別の受診目安

発熱・強い腫れ・外傷後の激痛は速やかに相談

次のような状態は、様子を見るより早めに医療機関へ相談してください。

  • 膝が赤く腫れて熱をもち、発熱を伴う
  • 転んだりひねったりした後から、強い痛みが続く
  • 体重をかけられない、膝が伸びきらない・曲がらない
  • 短時間で大きく腫れてきた

感染や骨折、靱帯・半月板の損傷など、早い段階での確認が望ましい状態が隠れている可能性があります。夜間や休日であれば、自治体の救急相談窓口を利用する方法もあります。

階段の痛みが続く・繰り返すなら受診を検討

急を要する症状がなくても、数日休んでも痛みが引かない、1〜2週間ほど続いている、落ち着いてもジョギングのたびにぶり返す。こうした場合は受診を考えるタイミングです。通勤の階段で毎回痛む、走っている途中でやめるようになったなど、生活や運動に支障が出ていることも目安になります。ここで挙げた日数は、あくまで判断の手がかりで診断基準ではありません。すでに数か月続いているなら、仕事が落ち着くのを待たずに一度相談しておくと、この先の判断材料がそろいます。

整骨院より整形外科で原因の確認を優先したい場合

けがをきっかけに痛み始めた、腫れが引かない、歩き方が変わってきた、痛みが長引いている。これらに当てはまるときは、まず整形外科で医師の診察を受け、原因を確かめることをおすすめします。画像検査による診断や薬の処方は医師が担う領域です。整骨院でのケアを併用したい場合も、診断を受けたうえで医師に相談しておくと、施術の内容を選びやすくなります。

受診したら何を確認する?走り続けたい希望の伝え方

痛む場所・腫れ・動き方から原因を調べる

診察は問診から始まります。痛む場所を押して確かめ、曲げ伸ばしできる範囲や腫れ、歩き方をみたうえで、必要に応じて検査を行います。レントゲンでは骨の変形や関節のすき間を、超音波(エコー)検査では関節内の水や腱・靱帯の様子を確認でき、より詳しい評価が必要ならMRIを検討することもあります。ただし、画像の所見だけで痛みの原因が決まるわけではなく、診察の結果と合わせて総合的に判断します。

診察では階段・走行距離・仕事中の動作を伝える

限られた診察時間で伝え漏れを防ぐには、メモを用意しておくのが近道です。

  • 痛みが始まった時期と、きっかけの有無
  • 階段は上りと下り、どちらがつらいか
  • 1回の走行距離と週の頻度、走った翌日の痛みや腫れ
  • しゃがむ・膝をつく・重い物を持つなど、仕事中の動作2

走行量や翌日の変化は、運動を続けられるかどうかを考える材料になります1。

運動をやめるか迷ったら、続け方と中止の目安を聞く

「できればジョギングを続けたい」という希望は、遠慮せず最初に伝えてください。一律に運動を止めるのではなく、距離や頻度を減らす、自転車や水中運動に一時的に切り替えるといった選択肢を、医師と一緒に考えやすくなります。あわせて、どの程度の痛みや腫れが出たら中止し、再受診するかという目安も聞いておきましょう。基準が決まっていれば、自己判断で無理を重ねずにすみます。

膝の痛みへの対処と費用で、診察時に聞きたいこと

運動の調整・体重管理・靴選びと治療の相談

日常で取り組める対策には、太ももやお尻の筋力を保つ運動、体重の管理、クッション性と安定感のある靴選びがあります。膝の内側の負担軽減をねらった外側楔状(くさび状)の中敷きは、歩行時に膝の内側へかかる負荷の指標をわずかに減らすものの、その臨床的な意味は定まっていないとする解析もあります3。市販品に頼りすぎず、自分の膝に合うかどうかを診察で相談するほうが確実です。運動も一律に控えるより、負荷を調整しながら続け方を探る視点が役立ちます1。

膝のヒアルロン酸注射は効果の時期・保険適用を確認

関節内へのヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症などの診断のもと、公的医療保険で行われるのが一般的です。最初は1週間ごとに数回続け、その後は間隔をあけて経過をみる方法がよくとられます。効き始める時期や持続期間には個人差があり、数回受けても変化を感じにくい方もいます。自己負担額は負担割合や同時に行う診療内容で変わるため、受診先で確認してください。「膝に貼るヒアルロン酸」をうたう市販品は、関節内への注射とは別物です。注射後に一時的な痛みや腫れが出ることがあり、まれに感染が起こる場合もあります。

再生医療を提案されたら対象・効果・総費用を聞く

PRP(多血小板血漿)療法や、ご自身の細胞を加工して用いる治療などは、再生医療に分類される自由診療で、公的医療保険は適用されません。これらは、変形性膝関節症の治療法として国の承認を受けたものではありません。膝への有効性や長期的な安全性を確かめた質の高い研究は限られており、研究ごとに対象や方法、結果にばらつきがあるため、学会の診療ガイドラインでも位置づけは定まっていません。どのような方に、どの程度の変化が生じるのかは現時点では明らかになっていません。変形性膝関節症では、学会の診療ガイドラインでも運動療法や体重管理、薬による治療などが基本とされており、まずはこうした治療について医師と相談することが勧められます。費用は治療内容や医療機関によって大きく異なり、一律の相場を示すのは難しいのが実情です。実際の費用は医療機関により異なり、ここで述べる内容は当院の費用を示すものではありません。 当院の費用は診察のうえでご案内します。提案を受けたら、自分の状態が対象になる理由、研究で分かっていることと分かっていないこと、変化がみられない可能性、通院回数と総額、ほかの治療との位置づけを確認しましょう。注射部位の痛みや腫れが一時的に出ることがあり、まれに感染が起こる場合もあります。細胞を用いる治療では細胞を採取する処置が加わることがあり、その部位に痛みや内出血が出ることもあります。

なお、再生医療等安全性確保法に基づく再生医療等提供計画の提出は、安全性を確保するための手続きであり、治療の有効性や安全性を国が認めたことを意味するものではありません。

東京都で仕事と膝の通院を両立するための相談事項

初診前に診療内容・予約方法・通いやすさを確認

東京都内で自宅と勤務先が別の区にある場合、職場の近く、自宅の近く、乗り換え駅のどこで通うかによって続けやすさが変わります。受診先のウェブサイトで、整形外科としての診療内容、予約方法、診療時間を前もって確認しておきましょう。エコーなどの検査や治療機器の有無も参考になりますが、実際に必要かどうかは診察で判断されます。

通院の回数と仕事への影響は初診時に相談

会議や出張で予定が読みにくい方は、その事情を初診時に伝えてください。検査、治療、経過確認にそれぞれ何回ほど通う見込みか、リハビリの一部を自宅での運動に置き換えられるかを尋ねると、予定が組みやすくなります。通勤時の階段がつらい場合は、その負担も一緒に相談しておきましょう。

保険診療と自由診療の範囲を聞いてから方針を決める

家計への負担が気になるなら、率直に伝えてかまいません。保険診療で検討できる治療と、自由診療を選んだ場合の総額を分けて説明してもらうと、判断しやすくなります。当院は自由診療のクリニックで、保険診療の取り扱いはありません。保険診療を希望される場合は、その点も踏まえて受診先を選んでください。階段の痛みが2週間以上続いている、あるいは数か月繰り返しているなら、繁忙期が過ぎるのを待たずに予約を検討してみてください。

よくある質問

Q. 歩けるうちは膝の痛みを様子見してもよいですか?

A. 数日で痛みが引いていくなら、経過をみる選択もあります。ただ、1〜2週間ほど続く、繰り返す、通勤や運動に支障が出ている場合は受診を検討してください。発熱や強い腫れ、けがの後の激痛、体重をかけられない状態があれば、早めに医療機関へ相談しましょう。

Q. 膝のヒアルロン酸注射は、いつから効いてどのくらい続きますか?

A. 効き始める時期や持続期間には個人差があり、一律の目安は示しにくいのが実情です。数回の注射を経て変化を感じる方もいれば、感じにくい方もいます。運動の再開時期も含め、注射の予定と合わせて医師に確認してください。

Q. ヒアルロン酸注射は保険適用になりますか?

A. 変形性膝関節症などの診断のもとで行う関節内注射は、公的医療保険で行われるのが一般的です。自己負担額は負担割合や診療内容で変わるため、受診先で確認しましょう。なお、保険診療を扱わない医療機関もあります。

Q. 膝の再生医療は「効果なし」と聞くこともあり、迷っています。

A. 膝の再生医療は、有効性や長期的な安全性を確かめた質の高い研究が限られており、学会の診療ガイドラインでも位置づけは定まっていません。状態によっては変化がみられない可能性もあります。提案を受けた際は、自分が対象になる理由、研究で分かっていることと分かっていないこと、総費用、ほかの治療との位置づけを確認したうえで判断してください。

Q. 膝が痛いときは、ジョギングを完全にやめたほうがよいですか?

A. 走ることと変形性膝関節症の関係には、まだ結論が定まっていない部分があります。痛みの原因や程度によって判断が変わるため、距離や頻度の調整、別の運動への切り替えを含めて医師と相談するのが現実的です。

参考文献

1. Timmins KA, Leech RD, Batt ME, et al. Running and Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. The American Journal of Sports Medicine. 2017. PMID: 27519678. DOI: 10.1177/0363546516657531

2. McWilliams DF, Leeb BF, Muthuri SG, et al. Occupational risk factors for osteoarthritis of the knee: a meta-analysis. Osteoarthritis and Cartilage. 2011. PMID: 21382500. DOI: 10.1016/j.joca.2011.02.016

3. Arnold JB, Wong DX, Jones RK, et al. Lateral Wedge Insoles for Reducing Biomechanical Risk Factors for Medial Knee Osteoarthritis Progression: A Systematic Review and Meta-Analysis. Arthritis Care & Research. 2016. PMID: 26605535. DOI: 10.1002/acr.22797

阿多由梨加

医師


MTXスポーツ・関節クリニック

院長

阿多由梨加

▶ 監修者プロフィール

経歴
2010年 横浜市立大学附属病院
2011年 横浜南共済病院
2013年 神奈川県立こども医療センター
2015年 横浜掖済会病院
2016年 Dr.KAKUKOスポーツクリニック
2023年 MTXスポーツ・関節クリニック 院長
資格・所属学会
日本整形外科学会
日本整形外科スポーツ医学会
日本臨床スポーツ医学会
日本小児整形外科学会
日本整形外科学会認定専門医(第122753号)
医学博士
日本スポーツ協会認定スポーツドクター
2017年〜自転車競技日本代表チームドクター