2022.11.15
成長期における柔軟性のトレーニング

一般的に成長期というと、8〜15歳頃の、子どもの身体から大人の身体へと変化する時期を指します。
親やスポーツの指導者であれば、この時期の子どものトレーニングについて一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
今の時代、ネットで検索すれば成長期におけるトレーニングについて細かい理論まで突っ込んだ様々な理論や知識を得ることができます。そのような細かい情報を知る前に、まずは「5~10年後にどうなっていたいか」と長期的な視点で考えることが、子どもの成長期のトレーニングを考える上ではとても重要となってきます。
前回のコラムでは、「運動体験をたくさんつくっておくこと」について話ししましたが、今回は、「成長期における柔軟性のトレーニングが大切な理由」についてお話したいと思います。
柔軟性とは
柔軟性とは筋肉と腱が伸びる能力のことで、筋力・瞬発力・持久力・調整力とともに基本的な運動能力のひとつです。
柔軟性が高いと、運動中に無理な体勢になったときにも、体がしなやかなバネのように使うことが出来るので怪我をしにくくなります。
なぜ成長期に柔軟性が必要なのか
成長期は身長=骨が伸びる時期です。しかし骨が伸びても筋肉が同じ様に伸びるわけではありません。その状態でスポーツを行うことで成長段階の未熟な骨や成長が追い付いていない筋肉や腱部分に高い負荷がかかり、負荷がかかった部位でのスポーツ障害(オスグッド病)を発生しやすくなるのです。
また、大人の身体になると骨が固まり筋力がついてきて、柔軟性を確保しにくくなるので、成長期のうちに柔軟性を養ってあげることが大切です。
では、成長期は柔軟性のどんな点を意識すると良いのかをご説明いたします。
成長期に意識するべき柔軟性
十分なストレッチによる柔軟性の“余白を確保”
子どもたちは運動が楽しくなると自分ではなかなか制御が出来ず、無意識にそのギリギリの状況で体を動かし続けることがあります。
そのような状況ではいつ怪我をしてもおかしくない状況です。そこで事前に念入りな準備体操やストレッチを行い、運動能力に耐えられるよう柔軟性に余白を持たせることが大切なのです。
分かりやすく車に例えると運動能力を最高速度とし、柔軟性が耐久力だとして、最高速度が100km/hの車で100km/hで走り続けているイメージです。
性能の限界ギリギリで走っており、メンテナンスをしないとすぐ壊れてしまうと想像できますよね。耐久力を維持するためにしっかりとメンテナンス(=余白を作る)することで、長く乗り続けることができます。車でもメンテナンスをしない使い方をすることは故障につながってしまうリスクがあります。人間の関節であればなおさらこのリスクは上がります。
身体は疲労の積み重ねやその日の体調で、柔軟性も毎日変化しています。軽い運動でも疲労が溜まっていることで故障してしまう確率が高まってしまうので、しっかりとストレッチを行いましょう。
柔軟性の偏りをなくす
もう一つは“全身の柔軟性に偏りをなくす”ことです。
例えば、腰周りはとても柔軟なのに股関節が硬い場合(実際にこのパターンは非常に多いです)、股関節が担うはずだった仕事が硬いことで十分できず、代わりに近くの腰が動きを作り全体として目的を達成しようとします。これを“代償動作”といいます。
このとき、硬い股関節ではなく柔らかい腰に過度な負担がかかってしまい、それが繰り返されることで、何の問題もなかった腰に負荷がかかり故障を引き起こしてしまうのです。
成長期はスポーツクラブや部活動などでトレーニングを初めて行うようになると思いますが、使う筋肉のイメージする一部分だけ柔軟をするのだけではなく、体全体のストレッチをしっかり行い、柔軟性に差をつけるのを避けましょう。
柔軟性の偏りをなくすことで、代償動作で変な癖付くことや今後怪我をしにくくなる体作りになると思います。
それにより避けることができる怪我もあるはずです。しっかりと自分自身で準備してスポーツに取り組んでいきましょう。
最後に
いかがだったでしょうか。
成長期において柔軟性とはとても大切だということが改めて、認識して頂けたでしょうか。
今一度、身体と向き合うきっかけとなれば嬉しいです。
次もぜひ読んでくださいね。

記事監修
MTXアカデミー トレーナー 田邊大吾
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の資格を持つ、マルチトレーナー。常識に流されない、自身のたしかな経験に基づいた正しい情報や判断基準からトレーニングのサポートを行い、競技復帰まで導く。
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