2023.03.14
捻挫を癖づけない為には

運動をしている際の転倒や、日々の生活でつまづいたりして捻挫をすることは珍しくありません。
ただ、捻挫をした際に不適切な対応をすることで捻挫がクセになったり、足首の関節が不安定になる事もあります。
そこで今回は捻挫の基礎知識から捻挫した場合の対応方法、捻挫をクセにしないための対策について解説したいと思います。
解剖と受傷のメカニズム
捻挫とは、不自然な外力により関節の靭帯や腱などが正常な可動範囲を超えるような動きを強制され傷つく怪我した状態をいいます。関節を支えている靭帯などが損傷することを靭帯損傷といいます。
⾜関節捻挫は大きく2つに分けることが出来ます。

・内反捻挫(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)
⾜を内向きにひねることで⽣じます。
⾜関節捻挫の9割は内反捻挫です。
・外反捻挫(三角靭帯)
⾜を外向きにひねることで⽣じます。
※稀につまずきにより前脛腓靭帯を損傷するケースもあります。
捻挫の症状と重症度について
受傷部位や関節によって歩きにくくなります。
くるぶしの痛みや腫れ ・⽪下出⾎(内出血)など⽇常⽣活やスポーツ活動に⽀障をきたします。
捻挫は、靱帯の受傷具合によって、以下のような3つのレベルに分けられます。
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捻挫は痛いながらも歩行することが可能なことが多いです。
しかし、疼痛が強い場合には無理に歩かず、松葉杖等を利用するのがおすすめです。
捻挫は癖になるのか
捻挫は癖になります。
受傷後に適切なケアを行わないと、反復性になってしまうことがあります。
関節を包む袋(関節包)や靭帯が緩んだままになってしまったり、足首周囲の筋腱の出力が低下することで、反応が遅くなることが原因です。
これはCAI(Chronic Ankle Instability:慢性足関節不安定症)といいます。
またこれは他の部位の障害に繋がったりもします。
負傷した部位をカバーしようとすることで、他の部位に負担が生じ怪我となります。
足は地面からの力を全身に伝える上でのスタート地点になるので、適切なケアが非常に大切なのです。
診断と治療方法について
捻挫の診断には下記が必要です。
・疼痛部位の確認
・靭帯の緩みを確認するテスト
・エコーによる靭帯の損傷度合いの把握、裂離骨折の有無
・レントゲン検査による骨折の有無(裂離骨折含む)の確認
上記二つに関してはスポーツの現場でもできますが、エコーを備えているところは少ないかと思います。
Ottawa Ankle Ruleを活用し、画像検査の必要性を判断します。
Ottawa Ankle Ruleとは
諸外国では医療費や機材の数の関係で画像検査を簡単に撮影することはできないため(アメリカ等先進国含む)、「レントゲン検査をする必要があるかどうか」を判断するための評価方法です。
以下の部位に圧痛があるか
・足首の骨(脛骨・腓骨)の後方6cm
・土踏まずの一番高いところ付近の骨(舟状骨)
・足の外側(第5中足骨茎状突起)
・足を引きずっても4歩以上歩けるか
上記のどれか一つでも当てはまるようであればレントゲン撮影が推奨されます。
逆に、当てはまらないようであればレントゲンは必要性は高くはありません。

当院での治療

応急処置として基本POLICEを行います。
負傷して3週間以内であれば、機能面を考慮し足首の固定具を併用することもあります。
当院ではリハビリは最初期から行います。
疼痛部位の炎症のコントロールも行いますが、患部外トレーニングは積極的に行っていきます。
それらの原因を検索し、身体に対して総合的にアプローチしていくことが重要です。
早期での復帰を目指したい方には関節内注射や体外衝撃波の併用もおすすめです。
靭帯の修復を加速させることや回復を促進することが期待されています。
手術になるケース
手術が必要になることは稀ですが、重症例や何度も捻挫を繰り返してぐらぐらになってしまった場合は手術加療が必要になるケースがあります。
徒手検査と、エコーで判断することが多く、複雑なケースではMRIを使用することもあります。
対策と予防について
神経・筋コントロール(neuromuscular control)を上げることが捻挫の予防になります。
運動前であれば準備体操やストレッチ、日々の運動習慣であれば縄跳びが良いとされています。
その他にも足関節周囲の弱い筋肉を選択的に鍛えるチューブトレーニングや、低下してしまったバランスを不安定な状況で鍛えるトレーニングが有効ですが、一人で正確に行うことは困難ですので、リハビリの専門家である理学療法士の指導を受けてみるのがおすすめです。
最後に
捻挫は足首だけが原因で起きるわけではありません。足の指、膝、股関節などの筋力や安定性の低下が寄与していることがほとんどです。
また、「痛みがなくなったらすぐにフルでスポーツ復帰」は非常に危険です。上記のようにしっかりと原因から解決していき、またMTX Academyの施設も活用し、トレーニングをしっかりと積むことで復帰時には怪我したときよりもパフォーマンスが上がった状態で戻れるように意識しましょう。

記事監修
MTXスポーツ・関節クリニック 院長 富岡 義仁
インディアナ州立大学アスレティックトレーニング学部卒、富山大学医学部卒。
東京警察病院整形外科で臨床に従事しながら、2020年オリンピック選手村ドクターを日本最若手として勤務。
2022年MTX関節クリニック開院を開院し、院長就任。
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