2023.04.18
スポーツにおける喫煙の影響について

喫煙が健康だけでなくスポーツする人にも「百害あって一利なし」であることは、もはや誰もが知るところです。しかし、その具体的な内容までは知らない人も多いのではないでしょうか。そこで今回はスポーツにおける喫煙の影響についてついて解説したいと思います。
タバコに含まれる有害物質とは
タバコの煙には約5300種類以上の化学物質が含まれ、有害物質は200種類以上、発がん性物質は70種類以上と言われています。
有害物質には以下の成分が良く知られています。
・ニコチン: 強い依存性があり、たばこへの依存性を高める化学物質
・タール:発がん性物質やがんを引き起こす可能性のある物質が約70種類含まれる粒子状の成分の総体を指す
・一酸化炭素:酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすい性質を持っていて、酸素を血液中へ運ぶ機能を阻害し、酸素不足を引き起こします。
タバコの煙は肺へと運ばれ、肺から全身の臓器へと運ばれる為、たばこに含まれる化学物質は全身に影響を及ぼすのです。
タバコがスポーツに与える影響
タバコがスポーツに与える影響については多くの研究がされています。
喫煙し運動をした場合、非喫煙時よりパフォーマンスの低下を感じている人が約90%を占めます。
呼吸機能低下
タバコの煙が肺胞の細胞を破壊したり、炎症を起こすことで様々な呼吸機能低下を引きおこし、喘息のリスク因子となったり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんの発生を引き起こす可能性があります。
スポーツにおいては、運動時に呼吸機能低下により息切れ・バテやすく、持久力低下する可能性があります。
パフォーマンスの低下:
煙草を吸うことで一酸化炭素がヘモグロビンと強力に結合するため、酸素運搬能力が弱まり有酸素系の運動能力を低下させます。
また,酸素負債量を増加させるため,非喫煙者よりも多くの酸素が回復時に必要となり,疲労の回復を遅くさせる原因となるのです。
筋力・瞬発力の低下:
タバコに含まれるニコチンは覚せい剤と仕組と似た仕組みで脳や神経を興奮させる作用があります。
習慣的に吸い続けることにより神経を刺激しつづけると、ニコチンが無いと神経が興奮しにくい体質になってしまうのです。
そのため、喫煙が筋力や瞬発力を低下させると考えられていて、選手に禁煙を呼びかける運動なども行われています。
また、ニコチンは血液循環が悪くなり、体中の組織が酸素欠乏に陥りやすくなります。
タバコ煙中の一酸化炭素の影響で、体は常に軽い一酸化炭素中毒状態となり、組織の酸素不足を引き起こします。
血管が収縮しするため、心拍が上昇し心臓に余計な負担がかかります。
またニコチンが交感神経を刺激することで、血管を強力に収縮させ全身の血液の流れを悪くしたり、心拍数と血圧が上昇することで心臓や血管に与える負担が増える可能性があります。
パフォーマンス低下だけでなく、スポーツをしている最中の突然の心臓病や脳卒中の危険性が高まります。
回復力の低下
スポーツの能力だけでなく、傷の治りなどを悪くするというマイナス面があります。
タバコは体内のビタミンCやタンパク質を消費します。
ビタミンCは、「靭帯」「軟骨」などの主成分であるコラーゲンを作るために必要な栄養素です。
タンパク質は「筋肉」の主成分ですから、タバコが体づくりに与える悪影響は明確です。
最後に(禁煙のすすめ)
主流煙より副流煙に有害物質が多く含まれています。
周囲の人へ身体的にも悪影響を及ぼすことに加え、他者の集中力を欠いたり、パフォーマンスの低下を招く可能性があります。
健康維持、スポーツのパフォーマンスアップのためにも禁煙をおすすめいたします。

記事監修
MTXスポーツ・関節クリニック 院長 富岡 義仁
インディアナ州立大学アスレティックトレーニング学部卒、富山大学医学部卒。
東京警察病院整形外科で臨床に従事しながら、2020年オリンピック選手村ドクターを日本最若手として勤務。
2022年MTX関節クリニック開院を開院し、院長就任。
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