2023.08.01
リハビリが大切!変形性膝関節症に対する保存療法

年々膝に痛みを感じたり、若い時のケガから歳を重ねるごとに痛みを感じ始める方は少なくありません。加齢に伴い関節軟骨の擦り減りで骨や軟骨に変形が生じることで、変形性膝関節症の発症率は日本では女性が男性の3〜4倍とされています。60歳以上の80%の方にはレントゲン上で変形性膝関節症(O脚、X脚)に繋がる所見が確認され、40%以上の方は膝に症状が見られ、10%の方には日常生活に支障が出るほどの症状を有していると報告されています。
しかし、日本だけでなく世界中の変形性膝関節症患者の約90%は保存療法が適応とされているのが現状です。今回は、変形性膝関節症と痛みの原因、運動療法、簡単にできるホームエクササイズについて 解説していきます。
変形性膝関節症とは
膝関節は大腿骨–脛骨の間と大腿骨–膝蓋骨の2つの関節から構成され、全体が滑膜という膜で覆われています。
骨と骨が接触する部分は関節軟骨というツルツルした組織で出来ており滑らかに動いたり、衝撃を和らげたりします。
変形性関節症では、この軟骨部分が擦り減り、軟骨下骨という神経がたくさん詰まった組織が刺激されたり、軟骨の破片などが滑膜を刺激することで炎症(水が溜まる)が起きたりすることで、痛みが生じます。
痛みを感じる箇所には神経が必ずありますが、爪や毛などは切っても痛みがないように、ツルツルとした軟骨や半月板の内縁では神経が乏しいです。
一般的な治療のガイドラインとしては

➀関節内(軟骨、靭帯損傷、半月板損傷など)
:薬物療法(注射や鎮痛剤)・外科的治療(手術)が有効
②関節外(筋肉の硬さや弱さなどが原因で痛い)
:非薬物療法(運動療法、セルフエクササイズ、減量)などが有効
国際的な変形性膝関節症に関する学会が発表したガイドラインでは運動療法の推奨度は96%とされ 、専門知識を持つ理学療法士による評価、運動療法、運動指導はさらに有益とされています!
どの動きで痛いのか考えてみましょう!
日常生活の中では膝の曲げ伸ばしが必要不可欠です。

では、どのくらい膝が曲がれば生活に困らないのでしょうか。
またどの動きで痛みが出るのか考えてみましょう。
例えば、
・自転車に乗りたいのに100°しか曲がらない、、、
・走りたいけど110°しか曲がらない、、、
・正座をしたいのに130°しか曲がらない、、、
など、関節の動く範囲が足らずにその動作ができない場合や曲げるのに十分な筋力が足りていない。
または曲がるけど途中で膝の内側が痛い、外側が痛い、膝の裏が痛い、お皿の回りが全体的に痛いといった様々な要因が考えられます。
痛みの訴えや痛みが出る部分は患者様によってそれぞれ違います。
リハビリでは、患者様の症状や目標とする生活レベル・趣味が満足にできるように個々に合わせて行うことが大切なのです!
当院の治療と方針 について

基本的には保存療法で行います。
医師の診察の下、手術が最適の治療と判断させていただいた方は、ご相談の下当院が連携している病院へ紹介させていただきます。
まずは問診や超音波エコーにて画像評価を行い、症状把握をします。
治療の選択肢としては、
①ハイドロリリース
エコーで身体の中の痛んでいたり動きの悪い部位を確認し、その周囲に薬液を注入する治療方法です。
【このようなお悩みの方が受けられております】
・ストレッチやマッサージでは改善に乏しい、しつこい肩こりや腰痛の方
・受傷後に可動域や柔軟性に違和感がある方
【注意事項(リスク・副作用)】
施行してすぐは疼痛がでる可能性があります。
リスクは低いですが、神経血管のそばを針が通った際に傷つける可能性があります。
②幹細胞上清液
培養上清液治療は幹細胞を培養するときに生じる上清液を用いた治療法です。
【料金】1回¥55,000円(診察料は含みません)
※価格は税込み表記です。
※自由診療です。
【このようなお悩みの方が受けられております】
・治療しているけれど、なかなか症状が改善しない方
・手術が必要と言われたけれど、手術以外の方法を選びたい方
・比較的に安価に再生医療を行いたい方
【注意事項(リスク・副作用)】
※効果には個人差があり、変形が強い場合には効果が出辛いことがあります。
基本的には細胞を含まない再生医療治療となりますので、副作用は出づらいと考えられています。
但し、患者様の体質、状態などによっては稀に下記のような副作用が起きる可能性があります。
各種アレルギー反応(掻痒感・発疹)
過剰反応(頭痛・易刺激性)
※治療期間について
・関節内要因→幹細胞培養上清液での関節内投与
2週間あけて3-5回、変形や疼痛が強いほど回数は増える傾向にあります。
・関節外要因→幹細胞培養上清液でのハイドロリリースもしくは生食などでのハイドロリリース
炎症の有無や組織の状態に合わせて使い分けます
1-2週間あけて3-5回、変形や疼痛が強いほど回数は増える傾向にあります。
③集束型体外衝撃波
非侵襲的に組織の深部までエネルギーを伝播し、組織再生を促進する治療法です。
【料金】1回¥16,500円(診察料は含みません)
※価格は税込み表記です。
※自由診療です。
【このようなお悩みの方が受けられております】
・ストレッチやマッサージ等では改善に乏しい方
・非侵襲的な(注射等ではない)治療を行いたい方
・他所ではあまり行われていない治療を試してみたい方
【治療間隔】
1-2週間あけて3回が1クールとなることが多いですが、状態により増減します。
【注意事項(リスク・副作用)】
※効果には個人差があり、変形が強い場合には効果が出辛いことがあります。
基本的には安全性が認められた治療器です。
まれに施術部位の腫れや発赤、皮膚トラブルが発生する場合がありますが、いずれも数日で軽快します。
④インソール作成
足や膝の痛み、変形等に対して保護や矯正を目的に行われる保存治療方法の一つです。
歩行中や運動中の悪い動きを見つけ出し、動き(特に立位、歩行姿勢)を意識的にコントロールし、スムーズでかつバランスのとれた状態に整えることを目的としています。
フィールド競技では効率よく足や趾を使えるようになり、怪我予防や競技能力を最大限に活かすことが出来るようになります。
【料金】両インソール¥44,000円
【このようなお悩みの方が受けられております】
・足や膝に痛みがある場合や、歩きにくさがある方
・ 変形性膝関節症以外にも、扁平足、足底筋膜炎、外反母趾、アキレス腱炎、シンスプリント、靭帯損傷、前十字靭帯損傷、内側側副靭帯損傷、半月板損傷などで適応となります。
【注意事項(リスク・副作用)】
特にありません。
⑤リハビリテーション
可動域訓練、運動療法、セルフエクササイズ指導など
【料金】30分 ¥7,700円(診察料は含みません)
※価格は税込み表記です。
※自由診療です。
【注意事項(リスク・副作用)】
特にありません。
リハビリはゼロからプラスにする重要な治療

当院では、関節内注射などで痛みを取り除き、痛みのない状態をゼロの状態と考えています。
この状態ではまだ歩き始める、階段を上るなどは難しいのです。
なぜなら、痛みで動かせなかった期間に筋肉は弱くなり、関節は硬くなっているからです。
そのためにリハビリがとても大切なのです。
リハビリでは、うまく使えずに筋力が落ちてしまったり、硬くなってしまった筋肉に対し、適切な筋力トレーニングとこまめなストレッチ運動を行います。
リハビリってマッサージと一緒ですよね? と聞かれることがあります。
いいえ、リハビリはマッサージではありません!
マッサージは、痛み等の障害を軽減させ、生活の質を向上を目指します。
一方、リハビリは機能訓練を通して日常生活動作の向上を目指すものなのです。
簡単に当院でのリハビリの内容を説明していきます。
➀問診
いつから、どこが、何をすると痛みがあるのかなど具体的にお伺いします。
痛みが改善することでしたいスポーツ、趣味や旅行ができるように一緒に目標を設定します。
②関節可動域の評価

膝関節はもちろん、股関節、足関節、体幹など体重を支えるすべての関節の可動域を評価していきます。
変形性膝関節症の方は股関節を後ろへ伸ばしたり足首上に持ち上げる範囲が狭くなる傾向にあります。
そこで、膝の近くの関節を評価することも治療に役立ちます。
③筋力の評価

可動域同様、膝はもちろん股関節、足関節周囲の筋力を評価します。
太ももの前や後ろの筋力など膝の曲げ伸ばしをする筋肉は痛みのない足に比べ、弱くなっていることが多いです。
他にも股関節を後ろへ伸ばしたり、外へ開く筋力や足首を上に向けたり、足の指を握る力が低下していることが特徴的です。
④運動療法

②、③で評価した部分で問題となった項目を改善することで、痛みの改善が見込まれます。
可動域が不十分の場合は正しいやりかたでのストレッチを指導し、筋力が低下している場合には痛みに合わせた運動強度のトレーニングを指導します。
痛みが改善してきたらスポーツ復帰や目標とする運動レベルに向けてステップアップしていきます。
⑤セルフエクササイズ


ふくらはぎのストレッチ、お尻上げ運動、ふとももに力を入れるなど、さらに機能改善を高める自宅でのエクササイズを指導します。
最後に
変形性膝関節症は保存療法が基本です。
正しい治療や運動療法を行うことで、症状が改善するケースはたくさんあります。
まずは診察で整形外科医による画像評価、治療を行い、リハビリで理学療法士による評価、運動療法など適切な治療が大切です。
変形性膝関節症でお困りの際は、何でもお気軽に当クリニックへお問い合わせください。
専門の医師やスタッフが丁寧にご対応致します。

記事監修
MTXスポーツ・関節クリニック 理学療法士 境 由加里
理学療法士として急性期病棟、整形外科クリニックで臨床に従事。
アスリート、小学生~スポーツ愛好家の方々の治療を対応し、その後はB1のプロバスケチームのトレーナーとして4年間活動。
運動療法を中心としたリハビリで多種多様な競技に対してサポートを行う。
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