2022.10.25
当クリニックが行う培養上清液治療とは

当院では再生医療、集束型体外衝撃波、運動療法の三本の軸で治療を行なっております。再生医療ではPRP治療、脂肪幹細胞治療(以下、ASC治療)、培養上清液治療を行っておりますが、その中でも当院で最も治療頻度が高い培養上清液治療についてご紹介いたします。
幹細胞治療と培養上清液(幹細胞培養上清液)治療の違い

幹細胞治療とは、様々な細胞に分化する性質をもつ幹細胞を自身の細胞から取り出し、培養し、増えた幹細胞を体内に戻すことで、損傷をうけた臓器を治す治療法です。
幹細胞治療は、多くの基礎実験により一定の治療効果が示されていますが、一方で癌化のリスクや治療費が高いなどのデメリットがあると言われている治療方法です。
培養上清液治療とは、幹細胞を培養するときに生じる上清液(上澄み液)を用いた治療法です。
培養上清液の中には、幹細胞自体は含まれていないのですが、炎症抑制、組織修復等の効果があるといわれている多種多様な成長因子やサイトカインが含まれており、幹細胞治療と同等の効果が期待されています。
培養上清液を使用するメリットとして、以下が挙げられます。
・準備期間が必要ない
事前の検査などが不要であり、受診当日に治療を開始することができます。その他当クリニックが扱う再生医療であるPRP治療は約3週間、ASC治療は約6週間準備期間を有します。
※診察内容によっては治療ができかねる場合がございます。
・様々な経路での投与が可能
全身投与には点滴を用い、特定の部位への投与には点鼻や吸入など、様々な投与経路での治療法が可能です。
なお、当クリニックの関節内への培養上清液を用いた注射治療は、アスリートの怪我からご高齢者の変形性関節症まで、様々な症状に適応があります。
・治療費を低くできる可能性がある
幹細胞治療は、患者様ご自身の細胞を採取し培養するというプロセスがその都度必要です。そのため治療費が高くなるのに対し、培養上清液治療は幹細胞がすぐには死なないという特性を活かし、幹細胞の培養を何度も繰り返し精製、回収することができるため、他の治療に比べて費用を低くすることが可能になるのです。
変形性関節症の治療例に挙げてご説明
一般的な治療方法
患者さんのお悩みの中心の一つである変形性関節症は、日本では人工関節置換術が盛んに行われています。手術方法や使用する道具(インプラント)も改良がなされております。
しかしどうしても手術加療には長期の入院が必要となったり※1、インプラントの摩耗年数の問題、また感染や脱臼、術中骨折など手術における合併症をゼロにすることはできません。体の酷使や怪我が原因で若くして関節変形が起きてしまった方、超高齢者で手術や入院生活に耐えられるか不安な方にはお勧めしづらいこともあります 。 ※1施設により入院期間は異なります。
MTXスポーツ・関節クリニックでの治療

当院では変形性関節症の方々には手術ではなく、まずは培養上清液の関節注射、体外衝撃波、運動療法の組み合わせをおすすめしています。
最初に体外衝撃波で質の下がってしまった組織を一旦壊し、次に培養上清液の関節注射で炎症を抑えて組織の修復を促し、痛みの改善を図ります。その後、運動療法により体力・筋力を向上させ、痛みが再発しづらい身体と生活習慣をつくります。
▼当院での対象疾患はこちら
培養上清液治療の対象疾患
培養上清液治療の注意点
培養上清液はスポーツ外傷での治療も可能です。しかし、注意点として、非常に新しい治療法であるため法整備が間に合っておらず、ドーピング検査(World Anti-Doping Associatoin, WADA)に抵触する可能性があります。いわゆるパフォーマンス増強材(Performance Enhancement Drug, PED)には当たらないと考えているため倫理的には問題ないと考えておりますが、ご不安な方は必ずご相談ください。
また、現状18歳未満の方には投与しておりません。
※PRP治療、ASC治療に関しては自己の細胞を用いるためドーピング検査には抵触せず、年齢やスポーツレベルに関係なく使用することができます。
最後に
いかがでしたか?
当院ではこのように培養上清液の関節注射、体外衝撃波、運動療法の組み合わせを利用した治療を多く行っております。
気になった方はお気軽にご相談ください。

記事監修
MTXスポーツ・関節クリニック 院長 富岡 義仁
インディアナ州立大学アスレティックトレーニング学部卒、富山大学医学部卒。
東京警察病院整形外科で臨床に従事しながら、2020年オリンピック選手村ドクターを日本最若手として勤務。
2022年MTX関節クリニック開院を開院し、院長就任。
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