2023.05.23
スポーツでの熱中症についての予防と対処法

スポーツは健康と楽しみをもたらす素晴らしい活動ですが、熱中症のリスクも伴います。特にこれからの暑い季節や激しい運動をする際には、熱中症に対する予防と正しい対処法を知ることが重要です。このコラムでは、スポーツでの熱中症について詳しく解説し、予防策と緊急時の対処法についてご紹介します。
熱中症の概要と原因
熱中症とは何か?
熱中症は、体内温度の上昇により生じる重篤な状態であり、暑い環境や激しい運動によって引き起こされます。
熱中症の症状にはめまい、頭痛、吐き気、けいれん、意識障害などがあります。
熱中症の主な原因
熱中症は、放熱(身体から放出される熱)と、産熱(身体で産み出す熱)のバランス異常が生じて発症する障害の総称です。
直射日光や高温、高湿、無風での激しい作業や運動を行うことによって、発症するリスクが高くなります。
また人間は、環境温が30℃を超えると皮膚や呼吸器から蒸発する水分量が急激に増加し、35℃を超えると、発汗が急激に増加することで体温の上昇を防ごうとします。
しかし大量の発汗等は、体内の水分を大量に消費するため、脱水症状が起こることもあります。
そのため、水分摂取や塩分補給、運動時の適切な着衣、身体の暑熱順化などが熱中症を防ぐために重要な対策となります。
熱中症の予防策
適切な水分補給
スポーツ中は、こまめな水分補給が重要です。
十分な水分を摂取することで、体温の上昇を抑え、発汗による放熱を行うことができます。
ただし、水分のみの補給の場合、血液中の塩分濃度の低下し、熱痙攣を起こす可能性があります。
スポーツ中の水分補給について考えられたものを摂取するようにしましょう。
経口補水液やスポーツドリンクがおすすめです。
タイミングについても、運動前、運動中、運動後の各段階で水分補給を行いましょう。
適切な服装と日除け対策
涼しい服装を選び、適切な通気性のある素材を使用しましょう。
また、帽子や日焼け止めなどの日除け対策を行うことで、直射日光による体温上昇を防ぐことができます。
また、汗をかいた際に拭くタオルを準備すること大切です。
汗は蒸発の際に体温が下がるため、多湿環境で汗が表皮についているままだと次の放熱が行われません。
適切な休息と適度な運動
過度な作業・運動や長時間の連続運動は熱中症のリスクを高めます。
休憩の際には、日陰で風通しの良い場所を選びましょう。
脇の下や、首元などを冷やし、上がりすぎた体温を下げることも重要です。
最近は水で濡らすだけで冷たくなるシートなど、便利なものも売られているので、自分を守るために携帯しておくといいかもしれません。
さらに大前提として、十分な睡眠時間をとり、疲労が溜まらないようにしておくことで、身体の機能が十分に働くような調整ができていることが重要です。
熱中症の緊急時の対処法
症状の早期識別と対応
熱中症の症状が重篤な場合(発汗がなく、皮膚が乾燥しており、意識障害が生じている状態)は、まず周囲の人に救急医療への連絡を依頼しましょう。
その後、涼しい場所で患者を横に寝かせ、体温を下げるために冷たいタオルや氷水で冷やします。
この場合においては、自身での放熱の機能を失っている可能性があります。
とにかく体温を下げるための行動を続けて、救急隊の到着を待ちましょう。
緊急時の応急処置
”最も効率的に体温を下げるには、4度の氷水プールに全身を浸けることと言われています。
現実的にそこまでの氷水の準備が難しい場合でも、夏場の練習では水道水だけでも良いのでプールを日陰に作り、そこに入るとよいです。
熱中症の症状が重篤な場合は、まず周囲の人に救急医療への連絡を依頼しましょう。
その後、涼しい場所で患者を横に寝かせ、体温を下げるために冷たいタオルや氷で冷やします。
最後に
熱中症予防は個人の責任だけでなく、チームや指導者、イベント主催者なども共同して取り組む必要があります。
熱中症に対する適切な情報の普及や教育活動の実施、環境整備の改善など、全ての関係者が協力し合うことで、より安全なスポーツ環境を築くことができます。
正しい知識を持ち、予防策を実践し、緊急時の対処法を熟知することで、我々はより安心してスポーツを楽しむことができるでしょう。
みんなで協力し合い、熱中症のリスクを最小限に抑え、健康的なスポーツ活動を実現しましょう。

記事監修
MTXスポーツ・関節クリニック 院長 富岡 義仁
インディアナ州立大学アスレティックトレーニング学部卒、富山大学医学部卒。
東京警察病院整形外科で臨床に従事しながら、2020年オリンピック選手村ドクターを日本最若手として勤務。
2022年MTX関節クリニック開院を開院し、院長就任。

MTXアカデミー トレーナー 植松 弘樹
関西学院大学社会学部卒.
大学まで硬式野球を続け、高校では県大会優勝を経験。大学では学生コーチとして、プロ野球選手を輩出した。プロ野球選手の自主トレやシーズン中のサポートを提供中。個々人に合った身体の使い方をはじめ、有益な情報を提供している。
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