2022.10.18
成長期は運動体験をたくさんつくろう!

一般的に成長期というと、8〜15歳頃の、子どもの身体から大人の身体へと変化する時期を指します。
親やスポーツの指導者であれば、この時期の子どもトレーニングについて一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
今の時代、ネットで検索すれば成長期におけるトレーニングについて細かい理論まで突っ込んだ様々な理論や知識を得ることができます。そのような細かい情報を知る前に、まずは「5~10年後にどうなっていたいか」と長期的な視点で考えることが、子どもの成長期のトレーニングを考える上ではとても重要となってきます。
その大前提を踏まえた上で、私たちが大切にしている成長期トレーニングのいくつかのポイントがあります。その中で今回は、「運動体験をたくさんつくっておくこと」 についてお話したいと思います。
成長期の運動体験から運動感覚を養う
運動体験とは
ここで言う「運動体験」とは、サッカー経験があるといった「競技の経験値」のことではなく、もっと根幹の「立つ・走る・跳ぶ・転ぶ・投げる…といった身体運動」のことです。
産まれてきた赤ちゃんは指しゃぶりなどから始まり、寝返りやハイハイ、立つ、歩くなど、生きていく上で必要な運動を学習していきます。2歳にもなれば当たり前になる“立つ”という運動も、最初は一から学習しています。
このように産まれてからしばらくは様々な運動を一から学びますが、獲得した運動要素がある程度の量になると、新しい運動様式だとしても過去に学習したことのある運動要素を応用したり組み合わせたりしながら新たな運動要素を獲得していくようになります。
獲得した運動感覚が多いほど新しい運動を学習するのに有利になる
成長期の子どもにとって、数か月~半年後のことを第一に考えたような短期的なトレーニング計画を立てるというのは良い考えではありません。
重要なのは、“将来に向かってどう伸びていきたいか”という長期的視点から、その土台となる要素=運動感覚を子どものうちに一つでも多く獲得していくことが大切です。
身近な例を一つあげます。
二人の小学生が一輪車の練習をしているとします。
一人は自転車に乗れますがもう一人は自転車に乗った経験もありません。
どちらが早く一輪車を乗りこなせるようになるでしょうか?
後者が超天才でない限り、みなさん同じ回答になるはずです。自転車に乗れる子は、ペダルを漕いで車輪を回転させ進む感覚、バランスを取る感覚、などをすでに獲得済みです。あとは車輪が一つとハンドルがなくなった分の違いに適応すればよいだけです。しかし自転車に乗った経験すらないと、全て一から学習することになります。
仕事でも過去に作った資料だったり、プログラムのコードだったり、枠組みをコピペして目の前の課題用に適応させた方が、白紙から始めるより圧倒的に早いはずです。
専門的な理論は割愛しますが、
“獲得済みの運動感覚が多いほど新しい運動を学習するのに有利になる” と理解していただければ問題ありません。
これは、“怪我を回避する能力”にも大きく関係します。
一つの運動に絞らず体験すること
子どもたちの運動環境に関して私が常日頃感じている問題点は、早い時期から特定の競技動作に特化し過ぎていて、身体を使った自由な遊びが少ないことです。
早いと5歳ぐらいから野球なりサッカーなりをやっていて、投げる・蹴るなどはとても上手なのですが、ジャンプをしてみるとどこかぎこちない、中学生でも鉄棒に10秒もぶら下がっていられない、など予想外のことがよく判明します。
中学生ぐらいまででしたらそれでも活躍できますが、それより上のレベルでは小学生の頃の技術体系でそのまま通用するのはごく一部の天才のみです。必ずどこかで壁にぶつかります。そのときに新しく学びを得られるかは、どれだけ「使えるツール=運動感覚の種類の多さ」を持っているかにかかっています。いつ役に立つかはわからないけど、獲得できる限りたくさんの運動感覚を若いうちに学習しておくと、ある時、点と点が線で結ばれる瞬間が訪れます。
当クリニックの連携施設であるMTXアカデミーでは、競技種目に関わらず全ての根幹となる、立つ・走る・跳ぶ・転ぶ・回る…といった運動感覚を多く取り入れ、運動体験豊かな子に育つように医師と共にトレーナーがプログラムを組んでいます。
最後に
いかがだったでしょうか。
幼い頃から1つのスポーツに絞って専門性を高めることも、良い面はあるかもしれないですが、視野を広げて様々な運動にチャレンジしてみるのもいいのかもしれません。
次もぜひ読んでくださいね。
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