2022.11.08
今、注目を集めている【FMS診断】とは

FMSとはFunctional(機能的に)Movement (動けているか)Screen(評価する)略語でアメリカの理学療法士、グレイ・クックとリー・バートンの2人によって開発されました。7つの評価項目から筋肉の柔軟性、筋力・バランス能力、関節の動き、姿勢、身体の不調痛みの有無など、現状の「身体コンディション」を確認する動作テストです。FMSは身体機能の「弱点」が明らかになるため、個々に応じた効率的なトレーニングメニューを組み立てることができ、2022年現在ではアメリカ4大スポーツ最高峰のNFL、NBA、NHL、MLBに始まり、アスリート、フィットネスクラブ、警察、軍、消防士、など様々な分野で採用されています。
目次
FMS評価のポイント
・正しい動作ができた場合 → 3点
・誤ったフォームや動作中の代償動作を伴うアライメント不良がある場合 → 2点
・動作パターンが不十分で実施困難な場合 → 1点
・疼痛により動作困難 → 0点
と、7種目の各項目を0〜3点のトータル21点満点で評価します。
・左右どちらも評価する(左右で点数の低い結果を最終スコア)
・動きの指導をしない(必要な場合は単に指示を繰り返すだけ)
・採点に迷ったときは低いほうのスコアをつける
合計スコアが14点以下、またはスコアに左右差がある場合、大きな怪我を発症するリスクが高くなるといわれています。
FMSの評価項目と評価方法
①ディープスクワット Deep Squat(DS)
体幹を軸に下半身の力と左右対称のしなやかな動きを行う為の筋力や、肩と肩甲骨の柔軟性と保持をする筋肉の状態を測定します。
1.両足を肩幅ぐらいに開いてまっすぐ立ち、つま先を前に向ける
2.両手でバーを持ち頭の上に置く
3.肩と肘を90°にし、バーを頭の真上に持ち上げる
4.背中をまっすぐに伸ばしたまま、できるだけ深くしゃがむ
5.元の姿勢に戻る
3点:正しく動作ができる
2点:正しく動作ができない
1点:足部がハードルに接触するorバランスを崩す
0点:痛みがある
②ハードルステップ Hurdle Step(HS)
片足立ちでのバランスと股関節付近の筋力、片軸で下半身のしなやかな動きを行う為の筋肉の状態を測定します。
1.両足をそろえてまっすぐ立ち,つま先をボックスにつける
2.首の後ろでバーを両手で持ち、肩に乗せる
3.姿勢をまっすぐにしたまま、右脚を上げてハードルをまたぐ。
4.足首と膝と股関節がまっすぐに並んだ状態を保つ
5.踵を床につけ、元の姿勢に戻る
3点:正しく動作ができる
2点:正しく動作ができない
1点:足部がハードルに接触するorバランスを崩す
0点:痛みがある
③インラインランジ In-Line Lunge(ILL)
前後開脚での屈伸運動によるバランスと下半身の筋力、肩の柔軟性と体幹の安定性を保つ筋力の測定をします。
1.背骨に沿ってバーを持ち、頭と背中とお尻の真ん中にバーを当てる
2.右手が首の後ろ、左手が腰の後ろに来るようにバーを持つ
3.右足をボックスにのせる
4.左脚の踵を(脛骨の長さ)の位置に置く
5.左右の足の裏をボックスにつけて、つま先を前に向ける
6.バーを頭と背中とお尻につけた状態で、まっすぐな姿勢を保ちながら、ランジのポジションになる
7.元の姿勢に戻る
3点:正しく動作ができる
2点:正しく動作ができない
1点:バランスを崩す
0点:痛みがある
④ショルダーモビリティ Shoulder Mobility Reaching(SMR)
肩関節の可動域を測ります。上肢・肩関節の対側動作における肩甲胸郭部、胸椎、胸郭の自然な相補的リズムの測定をします。
1.手の大きさを測る(遠位手関節皮線から中指先端)
2.両足をそろえてまっすぐ立つ。
3.握り拳をつくる
4.右(左)の拳を頭の後ろからできるだけ下へ下げると同時に、左(右)の拳は背中のほうからできるだけ上に挙げる
5.両手を無理やり近づけようとしない
3点:手の大きさよりも短い
2点:手の大きさの1.5倍
1点:手の大きさの1.5倍より長い
0点:テスト中に痛みがでる
⑤アクティブストレートレッグレイズ Active Straight Leg Raise(ASLR)
股関節や大腿部の柔軟性と体幹の筋力、左右の足が分離して動いているか測定をします。
1.ボックスの上に膝の裏側をつけて仰向けになり、つま先を上に向ける
2.両手を体の横に置いて,手のひらを上に向ける
3.右足(左足)のつま先をすねのほうにひきつける
4.左膝(右膝)の裏側をボックスにつけたままで,右脚(左脚)を伸ばしてできるだけ高く持ち上げる
3点:棒よりも上がる
2点:膝の高さまで上がる
1点:膝の高さまで上がらない
0点:テスト中に痛みがでる
⑥トランクスタビリティプッシュアップ Trunk Stability Push Up(TSPU)
四つ這いでのバランスと複合運動からなる動作の反射神経と筋力の測定をします。
1.うつ伏せになり、両手を肩幅に開いて頭の上に伸ばす
2.手の位置を下げて、親指を額のラインに合わせる
3.両脚をそろえてつま先を立て、膝と肘を床から離す
4.体幹を真っ直ぐにしたまま体を1つのかたまりとして押し上げて、腕立て伏せの姿勢になる
3点(男性):額のラインできる
(女性):顎のラインできる
2点(男性):顎のラインできる
(女性):鎖骨のラインできる
1点(男性):顎のラインできない
(女性):鎖骨のラインできない
0点:テスト中に痛みがでる
⑦ロータリースタビリティー Rotary Stability(RS)
上下肢の複合的な動作中における多平面上での骨盤・コア・肩甲体の安定性を測定します。
1.ボックスをまたいで、四つ這いになる
2.左右の親指、膝、つま先をボックスの横に当て、つま先をすねのほうに引きつける
3.同じ方の手と脚を同時に伸ばす
4.右肘(右手)と右膝(くるぶし)をボックスの上でくっつける
5.手と脚を伸ばす
3点:体幹回旋などの代償動作なく同側で正しくできる
2点:体幹回旋などの代償動作は起きるが、バランスを保持して同側で可能
1点:同側で正しくできない
0点:テスト中に痛みがでる
FMSのまとめ
FMSは、基礎的な動作が上手くできているかが重要であって、弱点をあら探しする必要はないという視点に立ち設計された運動テストによる評価基準です。
つまり、枝葉(痛みなどの症状が出ている部位)は見ず、幹(全身の身体機能)の問題に注目する「評価」が重要である、ということです。
その結果、動作パターンにおいて、機能的な問題や痛みが発覚した際は「SFMA(セレクティブファンクショナルムーブメントアセスメント)」という評価方法を活用していく流れです。
そちらは、次の私(理学療法士:石崎)のコラムでご説明させていただきます。
最後に
当クリニックではFMSのポイントでご説明した枝葉、幹の両方で治療介入していきます。
枝葉に対して集束型対外衝撃波、ハイドロリリース、徒手療法などで介入、幹はFMSなどのツールを用いて活用しております。
是非当院をご利用ください。

記事監修
MTXスポーツ・関節クリニック 理学療法士 石崎翔大
2011年理学療法士免許を取得。整形外科領域で延べ6万件以上の治療、トレーニングに携わり、日常生活での痛みの改善、オリンピック代表選手などのアスリートの競技復帰をサポート。
最新記事
NEW
-
サッカーのキック動作に潜む危険:股関節痛を理解しよう
サッカーは、足でボールを操る特異なスポーツであり、その多様な動作と接触が魅力です。 しかし、このスポーツには怪我もつきものです。このコラムでは、サッカーにおけるキック動作から発生するグロインペイン(鼠径部痛症候群)と言われるような股関節痛の障害に焦点を当て、その診断、治療、そしてリハビリについて解説していきます。
2023.09.22
続きを読む
-
投球時の肩関節後方の痛み:インターナルインピンジメントとは?
以前の投球障害肩(野球肩)に関するコラムでは投球時の肩の痛みに共通して述べられる事柄について解説させていただきました。
野球における投球動作では肩関節に大きな負荷がかかります。ボールを投げていて肩に痛みが出てしまう選手も少なからずいると思います。
好きで始めた野球が痛みのせいで満足にプレーできない状態になると、心から楽しめなくなってしまうと思います。
今回は、投球障害肩の中でもインターナルインピンジメントと呼ばれる障害の原因・症状、治療やリハビリのポイントについて解説していきます。2023.09.05
続きを読む
-
タイミングで変わるメリット:運動前後のストレッチを解説
はじめに、現在の日本人の8割程は運動不足と言われています。この運動不足は、様々な病気の原因になります。心不全、脳梗塞、糖尿病などの生活習慣病、そしてまたメタボと関連するさらに、現代人の多くは「疲れ」が不調の原因であると考えられています。 特にデスクワークによる長時間の座りっぱなしは、筋肉を動かすためにずっといるために硬いこわばって凝り固まる性質があり、その結果、身体の痛みや不調を考えて起きます。この身体への負担が積み重なると、精神的なストレスも生じ、自律神経の乱れや身体の不調が治りにくいということもあります。
今回はそんな痛みや不調を改善させる“ストレッチ”について紹介します。
2023.08.08
続きを読む
タグ一覧